岡山の初期研修医ブログ

本業の医学知識・論文紹介(総合診療、リウマチ膠原病など)をメインとして、お酒の知識(日本酒、ワインのレビュー)、その他ゆるゆるな小ネタをはさみます。『サマリーになっていない要旨』 を目指して。ぜひお付き合いくださいませ。

腎盂腎炎の診断と尿Gram染色

レベル:☆~☆☆

 

  • 腎盂腎炎と尿Gram染色について考える
  • 高齢者の発熱検索で最終的に腎盂腎炎』と診断するのは時として非常に難しいです。他の感染フォーカスが無いことを確認したうえで診断するため、基本的に腎盂腎炎は除外診断である!医学生は覚えておいてくださいね☆

 

  • 他に感染フォーカスが無いことを①病歴、②身体所見、③検体検査(喀痰、血液の検体も治療前に必ず取っておきましょう)、④画像所見 などから確認したうえで、①排尿時痛頻尿など自覚症状②尿定性・沈査③尿Gram染色像などで総合的に『腎盂腎炎らしい』と診断します。
  • 腎盂腎炎らしい』、と表現したのも必ず例外があるからです。

 

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  • これは尿のグラム染色像です。グラム陰性桿菌で、太いボテッとした桿菌がまるで列車のように連鎖を形成しています。
  • 太くボテッとした陰性桿菌をみたら、①Proteus spp. ②E.coli、③Klebsiella spp.などいわゆる`PEK`を原因菌として考えます。列車のように連鎖を形成することは発育が非常に速い状態を意味しますが、無症候性細菌尿でもこのような像を呈するので、これだけで腎盂腎炎とはいえません。グラム染色で菌体がみえなくても腎盂腎炎は否定できませんし、逆に高齢者の20%は無症候性細菌尿があるといわれており、菌体と白血球がいても腎盂腎炎とはいえない、というなんとも言えないところです。。。

 

  • 診断に際しては、直腸診を忘れていて腎盂腎炎と思ったら実は前立腺炎だった尿と血液培養を取らずに腎盂腎炎に対してセフトリアキソンで治療していたら4日たっても解熱せず、実は感染性心内膜炎(IE)によるMRSAの血流感染症だった、なども臨床で経験されるそうですので、既往歴に腎盂腎炎、と書いてあっても、『それってほんとうに腎盂腎炎??』と疑う姿勢は必要そうですね。

 

  • 最後に、尿所見のTipsを紹介して今回は終了です、お疲れ様でした!
  • 尿定性では尿pH(正常:4.6 - 8.0)にも注目せよ。pH上昇(≧8.0)をみたらProteus spp.、②Klebsiella pneumonia (Oxytoca)、③Morganella morganiiを考えよう。これらはウレアーゼ活性が高く、尿素アンモニア + CO2へ分解するためpHが高くなります。

 

☆まとめ☆

腎盂腎炎は除外診断!

腎盂腎炎と診断しそうになっても、前立腺炎IEからの血流感染はないか、考えるクセを。